とはいえ、これだけ違う舞台を、この映画の「原作」と言い張るのは相当無理がある。上田監督側が、「原案」として「GHOST IN THE BOX!」や和田亮一氏をクレジットしたのは、精一杯の誠意だと思える。
「原案」と「原作」の違いはというと、要は、原作料を払うか払わないか、という違いで、和田氏も最初は「原案」で納得し、むしろ映画のヒットを喜んでいたのに、ヒットが大きくなると、急に言うことが変わるというのは、どうと思う。
そもそもの話、なぜ「原作」はお金が発生し、「原案」ならお金が発生しない理由を、なぜほとんどメディアは説明しないのだろう。どの記事を読んでも、上田監督と、和田氏のやり取りを、面白がって取り上げるだけで、どちらの言い分が正当なのかも含めて、結論は出ているのに、全く言及しないのには、イライラする。
「カメラを止めるな!」盗作騒動の法的な論点 | 映画・音楽 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準唯一、まともな解説記事は、これぐらいだろうか。
著作権法が保護するのは、著作物の表現であって、アイデアではない。
上田監督が、「カメラを止めるな!」を作るにあたって、「GHOST IN THE BOX!」固有のセリフなどを無断で借用していれば、それは法的問題になる可能性がある。ただし、「GHOST IN THE BOX!」のセリフであっても、ごく一般的なセリフであったり、ごく短いセリフであれば、大抵は「GHOST IN THE BOX!」以前の作品でも使われたセリフなので、著作権を認められない。
「カメラを止めるな!」の場合、そうした些末な著作権の問題が特に問題になっているわけではなく、和田氏によれば「ある特徴的なストーリー展開のアイデア」を、映画で使ったことが、問題のようだ。
しかし、著作権法は、このような「アイデア」には何の権利も認めていない。
それは、文芸作品に限らない。
例えば、料理のレシピ本は、その写真や文章表現も含めた著作権は認められるから、そっくりの本を作ったら著作権侵害で訴えることができるが、その料理のアイデアやレシピについては、単なるアイデアや手順の記述であり、著作権法では保護されない。
だから、プロの料理人は、基本、レシピを門外不出にするのである。
したがって、「カメラを止めるな!」が、「GHOST IN THE BOX!」のアイデアを利用したとしても、法的には何の問題もなく、人道的にも、しっかり原案として明記しているのだから、こちらも何も問題はない。
元々、法的に根拠がないことに対し、何かお金を払え、というのは、それは言いがかりでしかないだろう。
和田氏は、一般人であるから、そのことが分かっていないのはまだいい。
さらに腹が立つのは、これだけ明確に問題がない話を「盗作」という言葉を使って、楽しそうに大騒ぎするメディアの人たちがたくさんいることだ。
こうした出版社には、有名大学の文系学科出身者がたくさんいるはずで、その中の2割ぐらいは法学部出身者が含まれるはず。
そうした法学部出身者なら、学生時代にちゃんと授業を聞いていれば、こうした著作権が保護する範囲なんて、当然知っていることの筈なのだ。
そんな難しいことではない。私は工学部出身だが、その門外漢でも、就職後、仕事に絡んで勉強してほぼ書物だけで習得できた知識なのだから。
「カメラを止めるな!」の騒動を「盗作疑惑」などと、おもしろおかしく取り上げる記事に対して、こうした法学部出身の出版関係者は、何故「無知で恥ずかしいから止めろ!」と口を出さないのだろうか?
これだから、安倍首相に、「大学に文系の学科は要らない」と言われるんだよ。
だって、理系と違い、法学部や経済学部って、その授業や研究が仕事で役に立っている人の割合はどれだけいるのだろう。
このようないい加減な記事が氾濫するのを見ると、改めてそう思ってしまう。
法に関わる仕事、経済や金融に関わる仕事や研究に就きたい人だけが行くようにすれば、法学部や経済学部の学生は今の2割ぐらいで十分じゃないだろうか。
残りの8割は、ただ単に就職のための活動のために法学部や経済学部に行っているのだし、そうした人間は、就きたい仕事のスキルを磨く専門学校にでも行けばいいのだ。
さらには、経済学部なんて、いつまで経ってもほとんど世界に通用する成果が出ず、ノーベル賞を受賞する学者も出てこないんだし、研究予算自体も縮小されても仕方ないだろ。
ということで、最後は、意味も分からず「盗作」を連発するマスメディアへの批判となってしまったな。
関連記事:
全部が他メディアからの引用だけのクズ記事:今日のクソ記事:So-netブログ