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ギズモード・ジャパン「MP3、正式に終了のお知らせ」 [IT]

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このサイトを立ち上げたときには、全く対象には考えていなかった、IT関係のクソ記事を見つけてしまったので、ご紹介。

mp3.jpg

MP3の特許ライセンスが終了 - AV Watch

音声コーデック「MP3」を開発した独Fraunhofer社が、Technicolor社のMP3関連特許と、Fraunhofer社とTechnicolor社のMP3関連ソフトウェアのライセンスプログラムが4月23日に終了したことを明らかにした。
という報道を受けて、ギズモード・ジャパンが、次の記事を掲載したのだが、これが呆れるクソ記事。

MP3、正式に終了のお知らせ|ギズモード・ジャパン

記事を要約すると、

・MP3がついにその役目を終えようとしている ・その理由として、最近のメディアサービスは、低ビットレートで高音質のAACや、次世代のMPEG-H、最新のISO-MPEGコーディックなどを使っている。
・この意思決定は、全てのメーカーがフロッピードライブの代わりにCD-ROMに移行していくようなもの
・MP3をサポートしているメーカーもあるが、今は、AACがスタンダードとなっている
・MP3はその役目を終えようとしているが、デジタルコンテンツの様相を変えたその功績は計り知れない
・レコードやカセットテープと違って、MP3はノスタルジックなマニア向けの需要はないだろう

といったもの。

ギズモードって、人気もある「IT系の専門ニュースサイト」だよね?
そういうサイトが、「これだけ的外れな論評記事を書いていいの?」と唖然とする。

上の要約を見ても、素直に同意できるのは、最後の「MP3はノスタルジックなマニア向けの需要はない」という項目だけ。

それ以外は、首をかしげる内容ばかりなのだ。

今回の発表は、MP3コーデックを開発した独Fraunhofer社の基本特許が、特許の有効期限の20年を迎えたことで、そのライセンスプログラムを終了した、ということに過ぎない。

そもそも、ある技術の特許が切れることと、その技術がその役目を終えることとは、何も関係がない。
もし、そお技術が20年経っても有益なものであれば、「特許が切れる=タダで使える」ということであり、むしろ、利用する側からすれば嬉しいことでしかない。

日亜、特許戦略踊り場 LED有力案件、17年に期限  :日本経済新聞

例えば、中村修二さんが書いた日亜化学工業の青色LEDに関する主要特許の多くが、今年2017年に切れるらしいのだが、青色LEDの需要はまだまだこれから増える一方だ。
特許が切れることで、青色LEDや、それを利用した白色LEDのさらなる低価格化が進み、むしろ普及が加速するだろう。

それなのに、MP3のライセンスプログラム終了の発表が、なぜ「MP3が正式に終了」することになるのか?

具体的に見ていっても、最近の高品質なデジタル放送や、ストリーミングサービスでは、AACなどのコーデックが使われるケースがほとんどではあるが、じゃあMP3が使われてないかというと、そんなことはない。
欧州の地デジ(DVB-T)では、ほとんど今でもMPEG-2 Audio Layer-3=MP3)コーデックが使われて続けている。
ストリーミング配信でも、低ビットレートの動画であれば、今でも音声はMP3であるケースが多い。
記事が、MP3終焉の原因の一つに挙げたアップル社のiTunesは、音楽配信は確かにAACを使用しているが、ポッドキャストの方はというと、今でもほとんどのコンテンツが、AACではなくMP3で配信されている。

再生機器の側を見ても、ポータブルオーディオプレーヤーや、DLNAオーディオ機器で、MP3が再生できない製品と言うのも、まずない。
むしろ、今、iPodやWalkmanが、MP3のサポートを打ち切ったりしたら、「とんでもないこと」であり、非難轟々となるだろう。

これらの状況証拠を見ただけでも、「MP3が正式に終了」という結論が誤りであることは明白だろう。

さて、MP3は、デジタル放送やストリーミング配信のコーデックとして規格化され利用される一方、フリーのコーデックソフトが、個人がCDを圧縮して、ポータブルMP3プレーヤーで持ち歩くために、利用が拡大してきたが、

MP3のライセンス問題はその後どうなったのか : Timesteps

MP3のライセンスに関しては、Fraunhofer社が、MP3コーデックを使用する製品やサービスを次々と特許侵害で訴え、マイクロソフトなどもライセンス料を払っていたりした。

フリーソフトの世界でも、訴えられる危機感から、特許をできるだけ避けたMP3コーデックLAMEが開発されたり、Ogg Vorbisなどの新コーデックも誕生したが、Fraunhofer社は、結局、彼らを訴えることはなかった。
おそらく、AACなどの対抗規格が登場しシェアを伸ばす中で、個人レベルでのMP3の利用を厳しく制限するより、利用を許した方が、ビジネスで優位に立てると考えたのだろう。

その結果、MP3は、特許の有効期限である20年が経過しても、未だに広く利用されている技術となっている。

GIF特許、日本でも期限切れに - ITmedia NEWS

GIFという画像フォーマットも似たような状況があり、基本特許を持つユニシスが、ライセンス料の徴収を要求し始めた。
それを避けるため、新たにPNGという画像フォーマットが発明され、それが使われるようになった時期もあったが、2004年にはGIFの基本特許が切れたことにより、再びGIFの利用が盛り返している。

ニュース - オックスフォード米語辞典が選ぶ今年の言葉、動詞の「GIF」:ITpro

2012年には、「オックスフォード米語辞典の今年のことば」(日本で言えば「新語・流行語大賞」みたいなもの)に、「GIF」が輝くまでに復活した。
この年頃から、短い動画を気軽にWebに掲載できる手段として、Animation GIFという技術が爆発的に利用され始めたためで、それは今でも続いている。

MP3も、特許が切れたことで、GIFと似たような状況で、地道に使われ続けるのではないだろうか?

AACがMP3より圧縮効率がいいとは言っても、数%~十数%程度の話であり、何倍も効率がいい訳ではない。
個人利用の世界では、まだまだ、MP3が「終わりを迎えた」とは思えないんだけどな。

関連記事:
科学技術ニュースの伝え方の難しさ:今日のクソ記事:So-netブログ



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